[レポート] トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2018

 世界的ヴァイオリン奏者であるワディム・レーピン氏が芸術監督を務める「トランス=シベリア芸術祭」(*1)。 昨年9月の「トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2017」に引き続きロシア・イン・ジャパンとして2度目の参画となります。
多彩な出演者とプログラムで多くの聴衆者に感動を届けた3日間をご報告いたします。

(C) Gela Megrelidze

 2018年6月29日(金)~7月1日(日)の3日間に渡り、渋谷のBunkamuraオーチャードホールにて開催された本公演は、ワディム・レーピン氏を中心に「継承」をテーマに多彩な音楽プログラムが繰り広げられました。

<恩師と愛弟子による“夢の饗宴”>

 初日の「スーパー☆ヴァイオリニスト 夢の饗宴」は、多くのヴァイオリン奏者を指導したザハール・ブロン教授と、レーピン氏の呼び掛けのもと教授の70歳のバースデーを記念して集まった愛弟子たちによるコンサートで、チケット完売後、立ち見がでるほどの盛況ぶりでした。

 今回参加したレーピン氏以外の演奏家は、ベルリン・フィルの第一コンサートマスターとして世界で活躍する樫本大進氏、8歳よりブロン教授に師事し新進気鋭のヴァイオリニストとして活躍する服部百音氏、同じくブロン教授のもとロンドン交響楽団との共演やチャイナ・フィルのソリストを務めるパロマ・ソー氏。

 公演はブロン教授とレーピン氏によるバッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043」で始まり、続いてブロン教授と愛弟子たちによるショスタコーヴィチ「2つのヴァイオリンのための5つの小品」、レーピン氏によるソロ、サン=サーンス「序奏とロンド=カプリチオーソ」、ブロン教授によるソロ、マスネ「タイスの瞑想曲」、ラヴェル「ツィガーヌ」、そして最後に教授とレーピン氏、樫本氏の3人によるヴィヴァルディ「3つのヴァイオリンのための協奏曲 ヘ長調 RV551」で終演。ブロン教授は初めから終わりまで御年70歳とは思えぬ迫力の演奏を披露しました。

<日本で初めての公開レッスン>

 2日目は、「ヴァイオリン・マスタークラス 公開レッスン」(*3)。世界のレーピン氏が日本で初めて行う公開レッスンでした。
当日は4人の若き才能たちが、一人ずつレーピン氏より具体的かつ丁寧な手ほどきを受けました。レーピン氏から指導を受ければ、すぐさまそれに呼応して演奏を修正する生徒もとても優秀なヴァイオリニストばかりでした。
ふだんは滅多にお目にかかれない一流ヴァイオリニストによるレッスンは、観るものを飽きさせない本物ならではの光景でした。

<レーピンを囲む日露のアーティスト>

 最終日は、「ワディム・レーピン&フレンズ 日露友情のアンサンブル」。
レーピン氏とともに日露のベテランから若手までの豪華ソリストが集いました。ヴァイオリンにはレーピン氏と、注目の若手奏者である神尾真由子氏が、ヴィオラはソロ活動はもちろん室内楽にも積極的に参加するベテランのアンドレイ・グリチュク氏と、現在ハンブルグ交響楽団ヴィオラ奏者として活躍する若手の大野若菜氏が、チェロは数多くの交響楽団でソリストを務めるベテランのアレクサンドル・クニャーゼフ氏と、今最も世界が注目する若手チェリストの岡本郁也氏、そして日本のピアニストの第一人者である横山幸雄氏が参加しました。

 1曲目は、レーピン氏と横山幸雄氏によるグリーグ「ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 op.45」。昨年末の渋谷東急ヒカリエでのパブリック・コンサート以来となる二人の共演でした。続いて、レーピン氏、神尾氏、グリチュク氏、大野氏、岡本氏、そしてクニャーゼフ氏による、ブラームス「ピアノ五重奏曲 へ短調 op.34」。そして最後はチャイコフスキー「弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」ニ短調 op.70」。世代を超えた美しいハーモニーが奏でられました。

 今回の公演で、レーピン氏は「継承」という思いを込めました。 恩師と愛弟子、公開レッスン、世代を超えた日露ソリストの出会い、と様々な「継承」の形を実現しました。
レーピン氏ならではの、音楽がつなぐ人と人の交流を存分に愉しめた3日間となりました。

*1 トランス=シベリア芸術祭
世界的に有名なヴァイオリニストであるワディム・レーピン氏が「芸術を“旅”と考え、東西の懸け橋にしたい」と、“シベリア横断”という意味を込めて名付けた公演。2014年、レーピン氏の故郷であるノヴォシビルスクで起ち上げられました
*2 ノヴォシビルスク
ロシアで人口規模第3の都市で、シベリアの中心的都市。別名「シベリアの首都」
*3 マスタークラス 公開レッスン
マスタークラスでは、マスター(先生)が特別な音楽的・技術的課題を、最上の方法で解決することにより生徒を啓蒙するものです
マスタークラス 公開レッスンとは、マスターが生徒を使って、聴衆に音楽的・技術的な要点を伝えるという、特別な「公開レッスン」形式を言います
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